漫画:望月三起也、ワイルド7(ワイルドセブン)を読んだ

電子書籍化されていたものを iPad で読んだ。電子書籍の元になったデータは文庫版だったようで、巻末に付録としてちょっとした文章が寄稿されていたりしてそれを読むのも面白かった。現代では放送禁止というか差別用語として使われない言葉なども作中で使われており、少年漫画なんだけど人を罰し人を殺す描写がかなり過激。アクションの描写が秀逸で、ストーリーの展開はかなり強引かつ破綻も多いけど純粋に読んでいて楽しい。

読んでみてすごい名作だと思ったのだけど、あまり知ってる人はいないみたい?


そこでおそらく当時少年であったであろう、現オッサンに「ワイルド7」って知ってますか?と聞いてみたら「知ってるけど知らん」との返答。「当時すごく人気あったんじゃないの?」と更に聞いたら「ワイルド7」が載っていた雑誌自体がマイナーだったらしく、田舎の書店には普通置いてなかった、だから作品の名前を聞いたことがあるけど当時書店にはその雑誌がなかったから読まなかった、らしい。出身が東京とか大阪とか都心じゃないというだけで作品の知名度がそんなに違うものなのだろうか・・・と疑問に思いつつ。

作品について調べると 1969 年から1979 年にかけて少年画報社の「週刊少年キング」で連載されていたようだ。この時代ならたしかに、情報という点で地域間格差はあったのかもしれないとまぁ納得。少年画報社は聞いたことあるから週刊少年キングも現役で存在するのかと思ったらすでに廃刊だった。廃刊の理由は『超人ロック』の呪いらしい、恐ろしい超人がいるもんやな。

バイクが後進したり崖を登ったり志乃ベエなどロリ要素も

作中に登場するバイクが実在する名モデルばかりなのだが、構造や仕組みなど一切説明のないままバックしたり補助輪出して切り立った崖を登ったり初期のギミックはたしかに少年漫画っぽい。そんな馬鹿なと思いつつ、これはおもしろいので許してしまう。

やや大雑把加減なバイク等のギミックに対して武器とか兵器のウンチクはかなり詳細で、少年漫画とは思えないほど実銃の威力や破壊力を作品で活かした描き方になっている。1970 年代にこれほどマニアックな武器の威力やアクション描写をしている作家は他に見たことがない。


初期は少年漫画風の色合いが強く、主人公の描かれ方自体が少年読者を意識した感じ。しかし中期〜後期になると劇画調で、主人公もまとう雰囲気が全然違うし仲間も次々と壮絶な死を遂げほぼ全滅で物語は終わるけど終わり方がまた良い。すごく印象に残る終わり方で、セリフ回しなども秀逸なものが多い作品だが、ただしよく調べると当時流行したCMのキャッチコピーや一種の流行語的なものが取り入れられている、あるいは元ネタが政治とか時事ネタの場合もあるらしい。

望月三起也の他作品だと読んだことがあるのは「秘密探偵JA」とか「ケネディ騎士団」「四つ葉のマック」「優しい鷲JJ」とか。「四つ葉のマック」は特に気に入った作品だったけどやっぱり「ワイルド7」が一番好きだと再認識した。

というわけでやっぱおもしれぇ!ワイルド7の読後記念として自作フリーゲームにも「ワイルド7」を取り入れてみた。

「グッジョブ!ペンタくん」というほんわかアクション・パズルなので銃とかバイクは一切出てこないけど、「ワイルド7」マップというものを作ったのでそれが遊べるようになっています。というか「ワイルド7」が面白かったので作ったマップです。

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続編も面白いけどやっぱり元祖が面白い

連載終了後発表されたワイルドの続編的なものは、個人的にはやや評価が下がるものも。というのは、少年漫画的な自由な発想で作られた「ワイルド7」に対して、続編は最初から大人向けというか突飛なギミックは少なく、武器とか兵器に対する比較的真面目なウンチクが充実していた。一方で武器の威力は時代と共にどんどん進化していったせいなのか、性能がややインフレ気味。結局主人公の耐久力が人間としてはやたら高いけど、敵の使う武器の威力はどんどん上がっていく。…のはずなんだけど主人公はやっぱり死なない、また強力な敵現る、これの繰り返しになるためちょっとマンネリ気味な展開なのだ。